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神戸地方裁判所 昭和47年(わ)1786号 判決 1974年5月14日

法人の本店

神戸市灘区岩屋北町五丁目二番一二号

法人の商号

森田商事株式会社

代表者の住所

神戸市東灘区深江南町一丁目一一番五号

代表者の氏名

森田国七

本籍

神戸市東灘区深江南町一丁目三三番地

住居

神戸市東灘区深江南町一丁目一一番五号

会社役員

森田国七

昭和五年一一月一五日生

右両名に対する印紙税法、商法、法人税法各違反被告事件について次の通り判決する。

検事 熊川照出席

主文

被告会社を罰金一二〇〇万円に、

被告人森田国七を懲役一年及び罰金一〇万円に、それぞれ、処する。

同被告人において、右罰金を完納することができないときは、金二〇〇〇円を一日に換算した期間、同被告人を労役場に留置する。

但し、本裁判確定の日から二年間、右懲役刑の執行を猶予する。

本件公訴事実中、商法違反の点につき同被告人は無罪。

理由

罪となるべき事実

被告会社森田商事株式会社は、登記簿上の本店を神戸市灘区岩屋北町五丁目二番一二号におき、事実上の本店を同市生田区多聞 二丁目二三番地において、サラリーマン金融を主たる目的としていたもの、被告人森田国七は被告会社の代表取締役として同社の業務全般を統括しているものであるが、被告人森田国七は、

第一、被告会社の業務に関し、法定の除外事由がないのに昭和四六年七月ころ、同市生田区相生町二丁目八番地新神戸ビル六〇六号室等において、同社か所轄神戸税務署長の承認を受けて設置した印紙税納付計器に付したか付印の印鑑に紛らわしい外観を有する印影を生ずべき、縦二六ミリメートル、横二二ミリメートルの金属板の上欄に「日本政府」下欄に「印紙税」「神戸BA12」と刻してあるほか、中央金額欄に「一〇円」等と刻した印九個(金額二〇〇円一個、同六〇円一個、同五〇円三個、同二〇円二個、同一〇円二個)を所持し

第二、被告会社の業務に関し、その法人税を免れようと企て、

一、昭和四四年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実業所得金額は五七、九二二、四〇九円、これに対する法人税額は一九、一三三、六〇〇円であるのにかかわらず、収入利息の一部を除外するなどしたうえ、同四五年二月二八日所轄灘税務署において、同署長に対し、所得金額が七、七一〇、七八五円、これに対する法人税額が一、七八五、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出するなどの不正の行為により、同年度の法人税一七、三四八、〇〇〇円を免れ

二、昭和四五年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際所得金額は二、七五一万五、六二八円、これに対する法人税額は八七八万四、五〇〇円であるのにかかわらず、収入利息の一部を除外するなどしたうえ、同四六年三月一日所轄灘税務署において、同署長に対し、欠損金額が一、四一九万三、〇七四円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出するなどの不正の行為により、同年度の法人税八七八万四、五〇〇円を免れ

三、同四六年一月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際所得金額は一億五二五万九、三二五円、これに対する法人税額は三、八二七万一、〇〇〇円であるのにかかわらず、前同様の不正手段により、同四七年二月二九日同税務署において、同署長に対し、繰越欠損金のうち一、三〇〇万五、三九六円を控除後の所得金額が〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出するなどの不正の行為により、同年度の法人税三、八二七万一、〇〇〇円を免れ

たものである。

証拠の標目

判示事実全部につき

一、被告人の当公判廷における供述

判示第一の事実につき

一、被告人の検察官に対する昭和四七年一二月一二日付、同月一六日付二六枚綴)

一、坂本利一、中村民子、山口恵美子、西久、正垣みどりの検察官に対する各供述調書

一、大前開二の検察官に対する同月六日付供述調書

判示第二の各事実につき

一、被告会社の登記簿謄本

一、被告人の検察官に対する昭和四八年二月二六日付、同年四月一〇日付、同月一八日付)

一、大蔵事務官山中清作成の証明書三通

一、大蔵事務官山口光一作成の脱税額計算書三通

一、大前 二の検察官に対する供述調書三通(同年二月二二日付、二六日付、二七日付)

一、西村則夫の検察官に対する各供述調書

法令の適用

第一の行為 印紙税法一六条本文二三条二七条

第二の各行為 各法人税法一五九条(七四条一項二号)一六四条一項(被告人につき各懲役刑選択)

各併合罪の加重につき、被告会社に対し刑法四五条前段四八条、被告人に対し刑法四五条前段四七条一〇条(第二の三の罪を最も重いと認める)四八条

被告人の罰金不完納の場合の労役場留置につき刑法一八条、懲役刑の執行猶予の言渡につき刑法二五条一項本件公訴事実中、被告人森田国七は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであり、同会社のため忠実にその職務を遂行し会社財産を不当に減少させてはならない任務があるのにこれに連背し、同社に損害を与え、被告人が全株式を支配する同市生田区中町通一丁目一一番地所在の親栄広告株式会社の利益を図る目的をもつて「真実は同社になんらの作業をさせたことはないのに」昭和四五年八月三日より同四六年一二月二七日までの間一七回にわたり、同社等において、パンフレツト折り畳みなどの作業をさせた対価支払い名下に被告会社より親栄広告株式会社に現金合計一〇一四万六九五〇円を支払いせしめ、もつて、右森田商事株式会社に対し同額の財産上の損害を加えたものである。との商法違反の点につき案するに、本件の各証拠を総合すれば、親栄広告株式会社なるものは、登記簿上、昭和四五年九月五日、印刷及び広告に関する一切の事業等五項目の目的をもつて設立された旨の記載はあるけれども、その実体は、役職員はいずれも被告会社の役職員と共通であり、被告会社以外の者とはなんらの取引関係に立たずいわば被告会社の業務に属する事務を行う名目的存在にすぎず、被告会社の企業に包括されるべきものであつて、これと別個独立の企業主体を構成するものときめることはできない。従つて、被告人の行為は同一企業主体内のものであつて、被告人において特に被告会社に損害を与え親栄広告株式会社の利益を図る目的があつたものということはできない。被告人の検察官に対する昭和四七年一二月九日付供述調書によれば公訴事実に添う供述記載があるけれども坂本利一の検察官に対する供述調書(昭和四七年一一月二八日付)その他の証拠に対比し、真実その供述記載通り支払が行われたものか疑わしく、他に設公訴事実を認めるに足る証拠はない。よつて刑事訴訟法三三六条により無罪の言渡をすることとする。

よつて主文の通り判決する。

(裁判官 山下鉄雄)

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